謹んで新春のお慶びを申し上げます。
【歳旦三つ物】
歳旦や百一匹のダルメシアン
一つ増えたる年玉袋
春の星ふたり暮らしの日日並べて
明けましておめでたうございます
今年も宜しくお願い申し上げます
結論から申し上げます。
姪つ子に翼を会はせました。
いつまでも俺が独り身でゐる事を、それこそ実の子のやうに心配してくれる姪つ子。
俺が心から愛する姪つ子に、同じやうに愛する翼を紹介したいと云ふ気持ちは、ずつと以前から有りました。
朋也にカミングアウトした時は、既に朋也と翼が知り合ひであつた事や、朋也に同性愛者の友達がゐた事に助けられましたけれど、今回はさう云ふ訳にはゆきません。
それでも、俺は会はせたかつたのです。
翼も色々と心配してゐましたけれど、俺の肉親に会つてみたい、恋人として認められたいと言つてくれました。
息子を婿くんに預け、実家近くの小さなカフェへ、姪つ子は約束通り、一人で来てくれました。
二人が対面した時、俺は情けないことに、直ぐに翼を紹介できませんでした。翼のことを何と言へば良いのか、判らなくなつてしまつたのです。
翼には本当に申し訳ないことをしたと思ひます。
少しの間、沈黙が続きました。気持ちばかりが焦つてしまつて、店内が禁煙なのも忘れて煙草を出さうとしてしまひ、姪つ子と翼から、同時に止められてしまふと云ふヘマをしてしまひました。
姪つ子が笑ひました。
翼も笑ひました。
姪つ子は鞄から小さなノートとペンを出して、何事かを書くと、翼に示しました。耳の聴こえない人だと云ふ事は伝へてありましたから、用意してきてくれたのでせう。
「初めまして。私はjabequeの姪の葉子です。」
ノートには、さう書いてありました。
翼はテーブル越しに姪つ子からペンとノートを受け取ると、その下にかう書きました。
「はじめまして。僕は〇〇翼といいます。平塚の出身で、実家には両親が二人で暮らして居ます。」
姪つ子は少し考へてから、翼の歳や、仕事はしてゐるのか等を質問しました。それから、自分の歳、結婚して子供が一人ある事、今は婿くんの仕事の都合で宮城に住んでゐる事等を話しました。
それから。
「私、おーちやん(姪つ子は俺をさう呼びます。)がずつと独りでゐるのは心配なの。良くないと思ふのね。」
「だから、もしも翼さんが一緒にゐて下さるなら、それは私としては安心。」
「翼さんがおーちやんの友達でも。恋人でも。」
ノートを読んだ翼が、目を見開いて俺を見ました。けれど、まごつくばかりで何も言へない俺に呆れたのか、ノートのページを捲つて、かう書きました。
「恋人でも?さうすると葉子さんの叔父さんはゲイということになりますよ。それでも大丈夫?」
うん、と姪つ子は頷きました。
「正直、困つたなつて、思つたよ。」
言葉に出して言つてから、同じ事をノートに書いて、更に、かう続けました。
「でも、私はおーちやんが大好きで、とても大切なの。絶対に幸せになつて欲しいの。だから、翼さんにおーちやんをお願ひしてもいいですか?」
「今日はその話をしに来たんでせう?」
翼はじいつとノートを見てゐます。
俺はそんな翼を何も言へずに見てゐました。
すると姪つ子が、テーブルの上に置いてゐた俺の手を、思ひ切り叩きました。
「おーちやん、しつかりしてよ!なんか今日のおーちやん、凄く格好悪いよ!」
そこまで言はれて、やつと俺は一言喋る事ができました。
「いいのか?」
全く、何て格好悪いんだろうな、俺。
ちやんと、紹介するつもりだつたんだ。
俺の愛する人です。俺が生涯掛けて守りたい人です。
つてさ。
“一生の不覚”つて、当にこの事だよな。
やり直せるものならば、やり直したい。
つまり、俺は全くの役立たずでしたけれど、話は丸く収まりました。
LINEの交換なんかしちやつてさ、先程、笑顔で帰宅しました。
なんだよー
なんだよ、俺はー
当分、立ち直れないと思ひます。
(T^T)
歳旦や百一匹のダルメシアン
一つ増えたる年玉袋
春の星ふたり暮らしの日日並べて
明けましておめでたうございます
今年も宜しくお願い申し上げます
結論から申し上げます。
姪つ子に翼を会はせました。
いつまでも俺が独り身でゐる事を、それこそ実の子のやうに心配してくれる姪つ子。
俺が心から愛する姪つ子に、同じやうに愛する翼を紹介したいと云ふ気持ちは、ずつと以前から有りました。
朋也にカミングアウトした時は、既に朋也と翼が知り合ひであつた事や、朋也に同性愛者の友達がゐた事に助けられましたけれど、今回はさう云ふ訳にはゆきません。
それでも、俺は会はせたかつたのです。
翼も色々と心配してゐましたけれど、俺の肉親に会つてみたい、恋人として認められたいと言つてくれました。
息子を婿くんに預け、実家近くの小さなカフェへ、姪つ子は約束通り、一人で来てくれました。
二人が対面した時、俺は情けないことに、直ぐに翼を紹介できませんでした。翼のことを何と言へば良いのか、判らなくなつてしまつたのです。
翼には本当に申し訳ないことをしたと思ひます。
少しの間、沈黙が続きました。気持ちばかりが焦つてしまつて、店内が禁煙なのも忘れて煙草を出さうとしてしまひ、姪つ子と翼から、同時に止められてしまふと云ふヘマをしてしまひました。
姪つ子が笑ひました。
翼も笑ひました。
姪つ子は鞄から小さなノートとペンを出して、何事かを書くと、翼に示しました。耳の聴こえない人だと云ふ事は伝へてありましたから、用意してきてくれたのでせう。
「初めまして。私はjabequeの姪の葉子です。」
ノートには、さう書いてありました。
翼はテーブル越しに姪つ子からペンとノートを受け取ると、その下にかう書きました。
「はじめまして。僕は〇〇翼といいます。平塚の出身で、実家には両親が二人で暮らして居ます。」
姪つ子は少し考へてから、翼の歳や、仕事はしてゐるのか等を質問しました。それから、自分の歳、結婚して子供が一人ある事、今は婿くんの仕事の都合で宮城に住んでゐる事等を話しました。
それから。
「私、おーちやん(姪つ子は俺をさう呼びます。)がずつと独りでゐるのは心配なの。良くないと思ふのね。」
「だから、もしも翼さんが一緒にゐて下さるなら、それは私としては安心。」
「翼さんがおーちやんの友達でも。恋人でも。」
ノートを読んだ翼が、目を見開いて俺を見ました。けれど、まごつくばかりで何も言へない俺に呆れたのか、ノートのページを捲つて、かう書きました。
「恋人でも?さうすると葉子さんの叔父さんはゲイということになりますよ。それでも大丈夫?」
うん、と姪つ子は頷きました。
「正直、困つたなつて、思つたよ。」
言葉に出して言つてから、同じ事をノートに書いて、更に、かう続けました。
「でも、私はおーちやんが大好きで、とても大切なの。絶対に幸せになつて欲しいの。だから、翼さんにおーちやんをお願ひしてもいいですか?」
「今日はその話をしに来たんでせう?」
翼はじいつとノートを見てゐます。
俺はそんな翼を何も言へずに見てゐました。
すると姪つ子が、テーブルの上に置いてゐた俺の手を、思ひ切り叩きました。
「おーちやん、しつかりしてよ!なんか今日のおーちやん、凄く格好悪いよ!」
そこまで言はれて、やつと俺は一言喋る事ができました。
「いいのか?」
全く、何て格好悪いんだろうな、俺。
ちやんと、紹介するつもりだつたんだ。
俺の愛する人です。俺が生涯掛けて守りたい人です。
つてさ。
“一生の不覚”つて、当にこの事だよな。
やり直せるものならば、やり直したい。
つまり、俺は全くの役立たずでしたけれど、話は丸く収まりました。
LINEの交換なんかしちやつてさ、先程、笑顔で帰宅しました。
なんだよー
なんだよ、俺はー
当分、立ち直れないと思ひます。
(T^T)