帆を張るやうに胸を張れ

会社で健康診断を受けさせてくれるのは有り難いんだけどさ、血液検査が辛い。いつその事、先端恐怖症なんですとか言つて逃れられないものかと。

毎年真つ青な顔で手のひらをぐーにしている俺に、医者はかう言ひます。

「大丈夫ですよ。一瞬チクッとするだけですから。」

その“一瞬”が耐へられないので大丈夫ではありません。

しかし逃げ出す訳にも行かないので、せめて楽しい事を考へてこの辛い一瞬を乗り切らうと思つた訳ですよ。

例へば注射をする時に患者が動くと危ないので、患者を固定する事が有ります。

(俺もさりげなく看護師さんに後ろから肩を押さへられます。)

その際にですね、小柄な男の子が俺と向かひ合ふ形で膝の上に座つて、ギュッと抱きつく感じでお願ひ出来ないかなあと。
ベッドに寝て、馬乗りになつて貰ふつてのもいいなあ。

(対面座位と騎乗位が好きです。)

はあはあ。

と、色々考へましたが、結局は太腿を抓つて注射の痛みを紛らはすと云ふ、シンプル且つ古典的な方法で注射を乗り切りました。