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帆を張るやうに胸を張れ

同性愛者のサラリーマンのblog

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冬雲や遠くに海の見える街

前に連れて行った鮨屋が気に入ったらしいのでまたそこへ行った。
カナダにも日本食の店は有るのだが、和食と言うよりは中華と言った方が良い感じらしい。

お薦めで頼んでおいて、時々好きな鮪の赤身や玉子をつまみながら、翼はとても楽しそうだった。
前に来た時に翼の耳に気づいた女将さんは、よろしければこれをと言って、品書と一緒に小さなメモとペンを翼の前に置いてくれた。外国人の客も多いので用意してあるのだそうだ。味は勿論、そんな事も有って、翼はこの店が気に入っている様だった。

処がホテルへ戻って二人きりになると、翼はまた鬱ぎ込んでしまった。鮨屋ではあんなに笑顔を見せていたのにと思うと、俺はこのまま帰りたい様な気持ちになった。

俺は一人になりたくて浴室に入った。
頭から熱いシャワーを浴びながら俺は自身の胸に問うた。会いたくて会いたくて、あれ程恋い焦がれた翼が今、自分の手の届く場所に居る。

それならば俺がすべき事は一つだけ。

俺は浴室から出て、翼にもシャワーを浴びる様に言った。

俺は部屋の灯りを落とし、ベッドの中で翼を迎えた。
毛布を捲って手招くと、翼は素直に俺の隣へ横になった。

俺達は日付が変わるまで、ベッドの中で指を絡めたり、キスをしたりしていた。
翼が眠ったのを見届けて、俺はホテルを出た。


  1. 彼との事