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帆を張るやうに胸を張れ

同性愛者のサラリーマンのblog

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ルーキーとパワハラ。

ルーキーを席に呼んで、大きな目玉クリップをかざしながら、手を出すやうに言つてみた。

「かうですか?」

他人を疑ふと云ふ事を知らないこのルーキーは、俺の手に有る目玉クリップを気にしながらも素直に手を出す。

「えい。」

一瞬、驚いたやうな顔をしながらも、耐へるルーキー。そこへA沢がやつて来た。

「何してるの!」

A沢は呆れた顔で俺を叱りつけると、無抵抗で大きな目玉クリップに喰い付かれてゐる、哀れなルーキーの右手を救ひ出した。

「全く馬鹿な事ばつかりして…あなたも嫌なら嫌つて言ひなさいよ!」

「…はあ。」

さうA沢に一喝され、ルーキーはまるで自分が悪い事をしたかのやうに背中を丸めた。

「どうして逃げなかつたの?」

A沢が自分の席に戻つてから、俺はこつそりルーキーに聞いてみた。

「ええと…」

ルーキーは暫しの逡巡の後、ぼそぼそと俺に白状した。

「手品でもして下さるのかと…」

俺はルーキーのご両親に是非お伺ひしたい。どうやつたらこんなに素直な良い子に育つのでせうか。


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