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帆を張るやうに胸を張れ

同性愛者のサラリーマンのblog

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青い灯を着て街路樹の冬支度

待ち合はせには、早めに行くやうにしてゐる。人を待たせるのが嫌なのだ。
処が先日、仕事の都合で約束の時間に遅れさうになつた。
待たせてゐるのは恋人。

遅れたのは何分でもない。
走れば間に合ふ。

夕方の人混みを掻き分けるやうにして進んでゆくと、待ち合はせの場所に、夕焼けのやうな、暖かなオレンジ色のコートが見えた。

それが見えた途端、俺の足は止まつてしまつた。

見たいと思つたんだ。
どんな顔をして俺を待つてゐるのか。

約束の1分前。翼は下を向いて、スマホの画面を見てゐる。

約束の時間。顔を上げて周りを見回し、再びスマホの画面に目を落とした。

二分後、再び周りを見回して、駅の方向を見る。

俺は店先の大きな立て看板に半身を隠して、翼を観察した。
翼は頻りにスマホの画面を撫でたり、首を傾げたりして、そはそはしてゐる。
その姿は遠目に見ても頼り無げで、可愛らしくて、俺は十分に満足して翼の元へ駆け寄つた。

待ち合はせに遅れて行くのも、たまには良いものですね。
  1. 彼との事