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帆を張るやうに胸を張れ

同性愛者のサラリーマンのblog

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恋の罪。

翼と歩いてゐる時に、前から来る男を見て、翼がハッとした顔をした。
擦れ違ふまで視線の隅で見てゐたのが判つたから、俺は我慢出来ずに嫌味を言つた。

「気に入つたんならナンパしてやらうか。」

全く、俺の隣で、ずいぶん大胆な事をしてくれるぜ。

ところが、いつもならそんな俺の嫌味なんぞ、鼻で笑つておしまひの翼が、戸惑ふやうな表情で俺を見上げてゐる。

まさかのまさかなのか…

俺が嫉妬から不安に突き落とされさうになつた頃、翼はやつと、ノートにペンを走らせた。

「あの人、」

翼のペンが止まる。翼は頻りに首を傾げたり、まばたきをしたりしてゐる。
ここで口を挟むと、また短気だの何だのと言はれるから黙つてゐると、またペンを持つ手が動いた。

「夢の中に出てきたの。」

それを読んだ瞬間、俺は件の男を追ひかけたくなつた。
追ひかけて、殴りたくなつた。

誰の許可を得て翼の夢の中に出てきてんだ、ああ?

なんとか気持ちを収めて翼を見ると、それこそ夢見るやうな顔でぼんやりしてゐる。

どんな夢を見たのか、聞いても良いものか。
物凄く気になるんだけど、聞かない方が…良いのかなあ。











  1. 彼との事

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