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帆を張るやうに胸を張れ

同性愛者のサラリーマンのblog

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運命の分かれ道。

ピアスを開けると運命が変はると言ふ。
良くなるのか、悪くなるのかは判らないけど。

翼は最初にカナダへ行つた後に開けたさうだ。
向かうで開けたんぢやなくて、日本に戻つてから、こちらの友達にピアッサーで開けて貰つたらしい。

と云ふ事は、カナダへゆく事は、翼の運命だつたのだらうか。そしてその後、カナダに住む事も、初めから決まつてゐた事なのだらうか。

翼によれば、あちらへ移住したり、仕事をしたりする事を考へたのは、ピアスを開けてからだから、それはピアスの効果らしい。

「俺と出逢つたのは?」

俺が聞くと、翼は笑いながら首を傾げ、考へるふりをした。
答へを促すやうに俺も首を傾げる。

『わからない』

翼はノートにさう書いて見せた。
それから続けて、

『でも、運命はそっちから来た』

さう書いて翼は、俺を指差した。

「え?」

俺が固まつてゐると、翼は照れたやうに頬を膨らませ、指差した指で俺の肩を突いた。

「痛いよ。」

俺は俯いたままで俺を突く翼の頬を指先で撫でて、顔の前でゆつくりと唇を動かして見せた。

実際、かなり痛かつた。

肩も、胸も、泣きさうなのを堪へたこめかみも。

「俺は絶対に、ピアスは開けない。」

翼は泣きさうな顔で頷いた。





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