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帆を張るやうに胸を張れ

同性愛者のサラリーマンのblog

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ボス。

久し振りに、前の上司が飲みに誘つてくれました。
初めてこの人の下についた時、俺は毎日、この人の顔を見る為に会社に行つてゐるやうなものでした。

飼ひ主の命令を完璧にこなす事に悦びを感じる、飼ひ犬のやうに。

唇の端をヒョイと曲げて笑ふ癖も、人の目をジッと見つめながら頷く癖も、未だに俺を魅了して止みません。
それを見たくて、彼がメニューを見終はる前に、彼の好みの酒を注文しました。
彼はオッと云ふ顔をした後、やつぱりあの笑ひ方をしてくれました。

仕事の話をしてゐると、気持ちは自然とあの頃に戻つてしまひます。雑談は雑談らしくしてくれよと、普段の会話まで、つい、報告口調になつてしまふ俺を、彼はよくさうやつてからかひました。

彼は静かに頷きながら聞いてゐたけれど、ふいに俺を見つめました。

「そんな事を言ふやうになつたんだな。」

昨年から会社の顧客管理と、指示系統の仕方が変はつて、賛否両論の意見が上がつてゐる事に関して話してゐる時でした。
俺は少し不安になつて、彼の顔を見返しました。

「いや、良いんだ。」

彼は俺の選んだ酒を味はひながら、うんうんと何度も頷きます。

俺に仕事を教へたのはあなたです。上司に惚れると云ふ事も。

そんな気持ちを込めて、俺は彼を見つめました。

彼が俺の上司ではなくなる日、寂しさと共に、少しホッとした事を覚へてゐます。
止めどなく涌き出る欲望を噛み殺しながら仕事を続けるには、俺はあまりにも若過ぎて。



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