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帆を張るやうに胸を張れ

同性愛者のサラリーマンのblog

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夫の背に張り付く衣や昼寝覚

陽盛りの道を歩いてきた身体をシャワーで鎮め、翼と冷たいシーツにくるまつた。

腕の中にすつぽりと収まつた翼は、いつになく積極的で、俺の裸の胸に唇を押し当ててきたりする。

『ドキドキしない?』

下から掬ひ上げるやうな瞳は、悪戯つぽい仕草とは裏腹に、不安げに揺れる。

「何が。」

俺が言ふと、彼はきゆつと唇を尖らせた。

『こんなにちかいのに。』

「ああ。」

拗ねると途端に子供つぽい顔になる。その愛らしいこと。
触れてゐる部分から、じはりと熱が甦る。抱き寄せると濡れたうなじから、俺と同じ石鹸の匂ひがした。
動物がするやうに、こめかみに鼻先を擦り付けて翼の匂ひを探る。指を絡めて柔らかく握ると、翼は俺の肩口に頬を当てた。

互ひの身体を重ね、擦り合はせ、互ひの身体の内の熱を吐き出す。俺はこの行為が大好きで、今まで相手を替へ場所を替へ、数へ切れない程繰り返してきた。

ただ、今までの相手は、総てを吐き出した後に何も残らなかつた。

翼のやうに、何も与へてはくれなかつた。



  1. 彼との事