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帆を張るやうに胸を張れ

同性愛者のサラリーマンのblog

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夫の背に張り付く衣や昼寝覚

陽盛りの道を歩いてきた身体をシャワーで鎮め、翼と冷たいシーツにくるまつた。

腕の中にすつぽりと収まつた翼は、いつになく積極的で、俺の裸の胸に唇を押し当ててきたりする。

『ドキドキしない?』

下から掬ひ上げるやうな瞳は、悪戯つぽい仕草とは裏腹に、不安げに揺れる。

「何が。」

俺が言ふと、彼はきゆつと唇を尖らせた。

『こんなにちかいのに。』

「ああ。」

拗ねると途端に子供つぽい顔になる。その愛らしいこと。
触れてゐる部分から、じはりと熱が甦る。抱き寄せると濡れたうなじから、俺と同じ石鹸の匂ひがした。
動物がするやうに、こめかみに鼻先を擦り付けて翼の匂ひを探る。指を絡めて柔らかく握ると、翼は俺の肩口に頬を当てた。

互ひの身体を重ね、擦り合はせ、互ひの身体の内の熱を吐き出す。俺はこの行為が大好きで、今まで相手を替へ場所を替へ、数へ切れない程繰り返してきた。

ただ、今までの相手は、総てを吐き出した後に何も残らなかつた。

翼のやうに、何も与へてはくれなかつた。



  1. 彼との事


青々と研ぎ上がる刃や梅雨晴間

シメジとスナップエンドウの味噌汁を作つてゐた時の事。
隣で茶碗を拭いてゐた翼が、ふと、手を止めて、シンクの中を覗き込んだ。やや眉を寄せ、ある一点を見つめてゐる。

「どうした。」

俺が聞くと、翼はあれ、と指を差した。

「どれ。」

見るとそれは、小さな小さな、1センチにも満たない、俎から溢れたシメジだつた。

「シメジだろ。」

翼は目を丸くして、俺の顔とチビシメジを見比べた。
どうやら翼は、チビシメジを何かの幼虫だと思つたらしい。

俺はチビシメジを摘まんで水で濯ぎ、鍋に放り込んだ。

「ほれ。虫入り味噌汁。」

『小学生か。』

翼はノートにさう書いて俺に見せました。そしてもう一言。

『もう、遊んであげないから。』

小学生か!


  1. 彼との事


ゴールデンウィークですね。

セックスは、なるべく自然な状態でしたいものです。気温とか。
俺は平気でも翼は寒かったりするから、エアコンをつけたり、布団の中でゴソゴソしたりするんだけど、やつぱり寒かつたり、暑かつたりするんだよね。

つふか俺は汗だくとか、エアコンでキンキンに冷えてるなんて云ふのも嫌ひではないのだけれど、それ等が気になつてセックスに集中出来なくなつたら、それこそ本末転倒と言ふもんだろ。
その上、風邪をひかせたり、機嫌を損ねて、させ貰へなくなかつたら目も当てられない。

ええと、それで何が言ひたいのかと言ふと、つまり、素つ裸にするには良い季節が来たなあと云ふ事なのですよ。全裸に目隠しをして、唇や指先、他にもいろんな“先つぽ”を啄む遊びをするのに、都合の良い季節が来た、と云ふ事なんですね。

何の前触れも無く、先つぽをパクリとやる訳です。
フッと息を吹き掛けたり、指でなぞつたり、時々は放置して観察したりするのも愉しいです。
緊張や焦燥が、徐々に情欲に変はつてゆく様を観察しながら手淫なんて云ふのも乙なものです。

ところで、“目隠し”は便利ですね。
用途に合はせて、猿轡にも拘束具にもなります。

楽しい休暇になりさうです。







  1. 彼との事


一口サイズ。

アイスキャンディーを食つてたら、一口ちようだいつてきたから一口やつたんだけど、ついでにこつちも一口どうだ?つて、パジャマのズボンを下ろす真似したら、両手を顔の横に上げて引つ掻くポーズ。

いいぢやんかなあ、一口くらゐ。
  1. 彼との事


ボンッ!キュッ!ボンッ!

翼のパンツを買ひにゆきました。

下着の方のパンツぢやありません。ズボンの方のパンツですよ。
かう言はなくても、今時の人は判るんだらうけど、俺は言はないとイマイチ不安なんだよう。

翼はピッチピチのスリムなパンツを探してたんだけど、シルエットなのか、履き心地なのか、暫し考へた後、試着したパンツよりも、ひとつ小さいサイズを履いてみると言ひ出しました。

「しやがんだり、座つたり出来ないんぢやないのか?」

俺はさう言つたんだけど、本人も、ショップのお姉さんも、

「ピタピタの方が、お洒落♪」

「ストレッチがきいてゐるから大丈夫!」

と、主張する。オッサンにはどの辺が“お洒落”なのか、さつぱり判らないんだけどさ。

試着室でパンツを履き替へてゐた翼がカーテンを開けた。パンツがきちんと上まで上がらないらしい。
ほら見ろと思つてゐると、翼がやおら後ろを向いて、ウエストの部分を指差した。
すると、

「失礼します。」

と言つて、お姉さんが試着室へ上がつた。
どうするのかと見てゐたら、お姉さんは翼のパンツのウエストの背中側を掴むと、フンッと引つ張り上げたのだ。
そして、それと同時に翼も前を引つ張つて、素早くファスナーを上げてしまつた。

凄い。凄いよ、お姉さん。
もはや、パンツを履くと言ふより、パンツに詰め込むつつふ感じ。

翼はめでたく、ピチピチのパンツを買ふ事が出来ました。(支払ひは俺ね。)

ああ云ふ対応つて普通なの?初めて見た。




  1. 彼との事

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