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帆を張るやうに胸を張れ

同性愛者のサラリーマンのblog


湾岸線を。

気を抜くと途端に意識を持つてゆかれさうになる。
飛行機の尾翼の灯りが、中空へと連なる夜の湾岸線は、ひつそりと無言で闇に立ち上がる工場群と、僅かな灯りをも避けるやうに低い唸りが駆け抜けてゆくだけ。

「見られてるぜ。」

室内灯を点けたままの俺の車を、隣の車線の大型トレーラーが高い運転席から覗き込む。

「ほら、隣の車。」

トレーラーは突然高い排気音を一つ残して、俺の車を勢ひよく抜き去つて行つた。

「まだかよ。次の料金所で下りるぜ?」

一瞬びくりと肩を震はせ、彼は顔も上げずに頷いた。
息遣ひがいつそう荒くなり、濡れた音が車内を満たす。

「ほら、もう直ぐだ。早くしないと全部見られちまふぞ。」

料金所を報せる最初の看板が闇の中から現れ、消へて行つた。

体の奥から迫り上がつてくる欲望と、料金所までの距離を計算しながら、俺は口笛を吹きたくなるやうな興奮を抑へてただひたすらに車を走らせた。


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