街路樹の若葉分けたるバスの屋根
全く知らない人に携帯を貸した。
バス停でバスを待つてゐた時、隣に立つてゐた男の子が、急に鞄やポケットをごそごそし始めた。小さな声で、あれ、とか、えー、とか言つてゐる。
暫くごそごそしてから、男の子は諦めたやうに俺に声を掛けた。
「すみません。あのう、もし携帯をお持ちでしたら貸して頂きたいんですけど。」
今にも泣き出しさうな顔に、俺は思はずどうぞと携帯を差し出した。
「ありがたうございます。」
男の子は頭を下げながら礼を言ふと、急いで何処かへ電話を掛けた。
処が通話の途中でバスが来てしまひ、男の子は通話を切り上げると、携帯を持つたまま、俺とバスに乗り込んだ。
「もういいの?」
「あ、はい。」
男の子はまた礼を言ひながら頭を下げ、俺の手に携帯を返しかけて、あ、つと声を上げた。
男の子はすみませんと言つて携帯を開けると、ジーンズのポケットからハンカチを出して携帯の通話口を拭き、恥ずかしそうに携帯を返して寄越した。
普通、携帯を借りたら通話口つて拭いて返すものなのでせうか。
俺はその仕草に却つて男の子の匂ひのやうな物を感じた。
なんだかその子とキスでもしたやうな気分になつてしまひ、午後中ムラムラして困つた。
バス停でバスを待つてゐた時、隣に立つてゐた男の子が、急に鞄やポケットをごそごそし始めた。小さな声で、あれ、とか、えー、とか言つてゐる。
暫くごそごそしてから、男の子は諦めたやうに俺に声を掛けた。
「すみません。あのう、もし携帯をお持ちでしたら貸して頂きたいんですけど。」
今にも泣き出しさうな顔に、俺は思はずどうぞと携帯を差し出した。
「ありがたうございます。」
男の子は頭を下げながら礼を言ふと、急いで何処かへ電話を掛けた。
処が通話の途中でバスが来てしまひ、男の子は通話を切り上げると、携帯を持つたまま、俺とバスに乗り込んだ。
「もういいの?」
「あ、はい。」
男の子はまた礼を言ひながら頭を下げ、俺の手に携帯を返しかけて、あ、つと声を上げた。
男の子はすみませんと言つて携帯を開けると、ジーンズのポケットからハンカチを出して携帯の通話口を拭き、恥ずかしそうに携帯を返して寄越した。
普通、携帯を借りたら通話口つて拭いて返すものなのでせうか。
俺はその仕草に却つて男の子の匂ひのやうな物を感じた。
なんだかその子とキスでもしたやうな気分になつてしまひ、午後中ムラムラして困つた。