帆を張るやうに胸を張れ

ご挨拶と云ふよりは、色々と確認されてゐるやうだつた。
いつから付き合つてゐるのか何処でどうやつて知り合つたのかから始まつて、俺の親はこの事を知つてゐるのか、翼がカナダにゐる間は、どうやつて連絡を取つてゐるのか、またそれについて不満等は無いのか等々。

「うちの子は耳が聞こへないし口もきけません。本当にそれでも良いのですか。」
「あなたの様な立派な方が結婚もせずに居たら周りが心配するでせう。」
「もしや結婚なさつてゐるのでは。うちの子とはさう云ふお付き合ひなのでは。」
「結婚されてゐても、さう云ふ趣味の方もいらつしやいますからね。」

これだけでもう十分にげんなりした。
例へそれが翼の親でも理解者でも、此処まで立ち入つても良いものだらうか。
さすがに趣味云々の話については翼が怒つてくれたけどさ、こんな事言はれちや喜んだり感謝したりする気にはとてもなれない。