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帆を張るやうに胸を張れ

同性愛者のサラリーマンのblog

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幾ひらの遠き記憶の開かるる錆びたナイフと蒼いカンバス

中学校では美術部に所属してをりました。

小さい頃、近所の絵画教室に通つてゐて、先生も教室も静かで好きだつたんだけど、仕上がつた絵を親父に見せにゆくのが嫌で、高学年になる前に止めてしまつたんだけど、絵を描く事自体は嫌ひではないので、なんとなく、美術部を選んだのでした。

後輩に長い髪をした女の子がゐて、たまに画材を買ひに、一緒に町田の“なかじま”まで行つたりしてゐたんだけど、部活の時は殆ど話さなかつた。
元々、おとなしい子だつたんだけど、週末が近づくと、

「先輩、今週は町田行きますか?」

と聞いてきた。

学区外へ出る時は制服でとか、男女で出掛けてはいけないとか、色々と煩い校則が有つたんだけど、3年生は殆どがそれを守らず、更に上級生が一緒の時は下級生も私服で良いと云ふ不文律まで有つた。
いつもは二つに分けて三つ編みにした長い黒髪をほどいた彼女は、淡い色味の服と相俟つてとても愛らしく、 連れだつて歩くと振り返る人もゐる程だつた。

「高校、先輩と同じとこ行かうかな。」

彼女がさう呟くやうに言つた。
俺はさして考へもせず、

「さう。」

と応へたやうに記憶してゐる。

彼女は俺が卒業する前に、父親の転勤について転校して行つた。



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