帆を張るやうに胸を張れ

俺のゐる業界は同業者が多い。
つまりライバルが多いと云ふ事で、お客様からすればいつでも取り替へがきくと云ふ事でもあります。

プレゼンに際して俺が部下に教へてゐるのは、慣用句を多用しない事とポイントを絞る事。
ポイントを強調したいが為に言葉を重ねてしまひ、結果として一番伝へたい部分がぼやけてしまふと云ふ失敗を避ける為だ。
慣用句の多用が良くないと言ふのは耳慣れてゐて耳障りが良い為、却つて印象に残らないから。

つまり出来合ひの整つた言葉より、多少下手でも自分の言葉で伝へる事が大事だと云ふ事。

相手に自分を印象付ける方法に“忘れ物”が有ります。
ルーキーに傘を忘れておいでと指示した処、忘れて来る事には成功したのですが、

「どうだつたの？話は聞いて貰へた？」

さう尋ねる俺に、ルーキーはもぢもぢしながらかう答へました。

「受付の方がお忘れですよつて…」

走つて追ひ掛けて来たさうです。

敵もなかなかやるのう。