何処より風の生まるる師走かな
久々にW部長と飲んだ。
後から誰か来るのかと思つたけど、結局二人きりだつた。
仕事が出来る上に俺達目下の者にも威張らないので人気が有る。
高校の同級生だと言ふ奥方と、既に成人されたお嬢さんが一人。
部内の噂話から今年の新人の話、お得意様の愚痴にお嬢さんの話。この人の良い所は酒の席で仕事の話をしない所だ。酒の席で上司が仕事の話をしたら部下は寛げないし、絶対に説教になるからね。
熱燗の猪口をつまむ指の付け根に毛が生えてゐる。
ぶ厚いたなごころで俺にモツ煮込みの小鉢を勧めてくる。
ネクタイを弛めた喉許から、酒に熱せられた体臭が立ち上るやうで思はず俺は目を閉じた。
「もう酔つたのか?」
笑ひを含んだ声に目を開けると、がつしりとした顎が見えた。
そのまま視線を上げれば、垂れ気味の二重の目が覗き込んでくる。
ふと、この人の襟足に顔を埋める自分の姿が頭をよぎり、俺はまた目を閉じてしまつた。
後から誰か来るのかと思つたけど、結局二人きりだつた。
仕事が出来る上に俺達目下の者にも威張らないので人気が有る。
高校の同級生だと言ふ奥方と、既に成人されたお嬢さんが一人。
部内の噂話から今年の新人の話、お得意様の愚痴にお嬢さんの話。この人の良い所は酒の席で仕事の話をしない所だ。酒の席で上司が仕事の話をしたら部下は寛げないし、絶対に説教になるからね。
熱燗の猪口をつまむ指の付け根に毛が生えてゐる。
ぶ厚いたなごころで俺にモツ煮込みの小鉢を勧めてくる。
ネクタイを弛めた喉許から、酒に熱せられた体臭が立ち上るやうで思はず俺は目を閉じた。
「もう酔つたのか?」
笑ひを含んだ声に目を開けると、がつしりとした顎が見えた。
そのまま視線を上げれば、垂れ気味の二重の目が覗き込んでくる。
ふと、この人の襟足に顔を埋める自分の姿が頭をよぎり、俺はまた目を閉じてしまつた。