帆を張るやうに胸を張れ

放射能も基地も、勿論考へなくてはならない事だけれど、やつぱり少子化が心配だ。

この処自分の持ち場を離れて、自社や得意先の営業所巡りをしてゐるんだけど、路線バスの中で色々と考へさせられる場面に遭遇する。

最近はバスの中や電車の中へ、ベビーカーを畳まずに持ち込めるやうになつたんだよね。常々大変だなあと思つて見てゐたから良い事だと思ふんだけど、当然そうは思はない人もゐる訳で。

先日、赤ん坊を連れた若いお母さんとバスで乗り合はせたんだけど、俺の前の座席に座つてゐた年配のオッサンが乗り込んで来た若いお母さんとベビーカーを見て舌打ちしやがつたんだよね。
それだけぢやなくて、若いお母さんに聞こえるやうに邪魔とか言ひやがつたの。

車内は空いてゐたし、ベビーカーは固定されてるし、俺やオッサンの位置からは全く邪魔にはならない場所にゐるのにだぜ。

若いお母さんは直ぐにオッサンの方を向いて頭を下げたんだけど、オッサンはそれで何かいい気分になつちやつたのか、またぐだぐだ言ひ出した。
その時、ベビーカーの横の座席に座つてゐたお婆ちやんが若いお母さんに声を掛けた。

「気にしなくつていいよ。あの親父は木の股からでも生まれたんだらうよ。」

やつたぜ、お婆ちやん！
思はず拍手をしさうになつちまつたぜ。

次からああ云ふ親父を見掛けたら、俺がさう言つてやる。