餌付け。
仔鹿ちやんの顔を見に、近所のコンビニへ行つてきました。
くたびれたオッサンの寂しい心を、こよなく慰めてくれた仔猫ちやんとの蜜月が忘れられず、性懲りもなくまた新しいバイトくんを餌付けしてゐる訳ですけれど、シフトの都合なのか仔鹿ちやんが入つてゐる時は、殆ど背の高い快活な女の子が一緒にゐるのです。
彼女は明るくハキハキしてゐて、手も口もよく動く、笑顔の素敵な女の子です。
清潔感も有り、なかなかチャーミングなのですけれど、俺が仔鹿ちやんを餌付けしようとしてゐる事に気づいてしまつたやうなのです。
先日、アイスの“白熊”を買つた時に、チロルチョコの“白熊”も買つて、仔鹿ちやんにあげました。するとそれを見てゐた彼女が話しかけてきたのです。
「お知り合ひなんですか?」
予期せぬ事に思はず固まつてゐると、仔鹿ちやんが俺と彼女を半々に見ながら、
「俺の知り合ひつて言ふか、店長のお知り合ひなんですよね?」
ね、と言ふやうに仔鹿ちやんが俺を見るので、俺も曖昧に頷いておきました。
しかし彼女は更に話しかけてきました。
「いいなあ。○○くん(仔鹿ちやん)この前もチロル貰つてたでせう。」
俺は咄嗟にレジに有つたチロルを3個とつて、仔鹿ちやんに差し出しました。
レジを打つて貰ひ、二つを袋に入れ、一つを彼女に進呈致しました。
「えー?ありがたうございます!いいんですか?つつて言ふか私、催促しちやつてますよね!?」
うん。
俺は仔鹿ちやんと彼女にバイバイと手を振つて、店を後にしました。
吃驚して煙草を買ふのを忘れちやつたぢやないかよう。
うーんうーん、もうちよつとで餌付け出来るのになあ。暫く行くのよさうかなあ。
うーんうーん。
うーんうーん。