風に乗る日。
「○○さん?○○せんせ?」
バス停でバスを降りた俺に駆け寄る若い女性と、待ちなさいと慌てた声で後を追ふ母親らしき女性。
「せんせ!せんせ!」
俺の両手を取り、ブンブン揺らす笑顔には見覚へが有つた。
「●●ちやん、元気だつた?」
抱きついてこようとする彼女を抑へて顔を覗き込むと、長い睫毛に縁取られた瞳がニーッと細くなる。
俺は記憶の中の少女より、ずいぶん背の高くなつた彼女と腕を組んで、息を切らせてゐる女性に挨拶をした。
「ご無沙汰してます。●●、今、働いてるんですよ。」
その女性、彼女のお母さんの言葉が終はらない内に、彼女が話し出した。
養護学校を卒業後、某企業の特例子会社に入社した事、仕事の内容や会社の約束事等、それは楽しさうに話してくれた。
ひとしきり話すと、彼女は肩に掛けてゐた鞄からマグを出して飲んだ。
熱中症対策とかで、それも会社の約束事なのださうだ。
「夢、叶ひましたね。」
思へ出話を幾つかした後、俺はお母さんに言つた。
働いて給料を貰ひ、それを自分の為に使ふと云ふ生活をさせてやりたいと、いつも言つてゐたから。
「あの子、頑張つたもの。今も頑張つてるし。」
さう言ふお母さんの笑顔には、たくさんの思ひが詰まつてゐるやうな気がした。
ジブリのアニメが好きな彼女は、今でも『風の谷のナウシカ』の歌が大好きで、よく歌つてゐるさうだ。
彼女の心が、いつまでも風のやうに自由で在りますやうに。
バス停でバスを降りた俺に駆け寄る若い女性と、待ちなさいと慌てた声で後を追ふ母親らしき女性。
「せんせ!せんせ!」
俺の両手を取り、ブンブン揺らす笑顔には見覚へが有つた。
「●●ちやん、元気だつた?」
抱きついてこようとする彼女を抑へて顔を覗き込むと、長い睫毛に縁取られた瞳がニーッと細くなる。
俺は記憶の中の少女より、ずいぶん背の高くなつた彼女と腕を組んで、息を切らせてゐる女性に挨拶をした。
「ご無沙汰してます。●●、今、働いてるんですよ。」
その女性、彼女のお母さんの言葉が終はらない内に、彼女が話し出した。
養護学校を卒業後、某企業の特例子会社に入社した事、仕事の内容や会社の約束事等、それは楽しさうに話してくれた。
ひとしきり話すと、彼女は肩に掛けてゐた鞄からマグを出して飲んだ。
熱中症対策とかで、それも会社の約束事なのださうだ。
「夢、叶ひましたね。」
思へ出話を幾つかした後、俺はお母さんに言つた。
働いて給料を貰ひ、それを自分の為に使ふと云ふ生活をさせてやりたいと、いつも言つてゐたから。
「あの子、頑張つたもの。今も頑張つてるし。」
さう言ふお母さんの笑顔には、たくさんの思ひが詰まつてゐるやうな気がした。
ジブリのアニメが好きな彼女は、今でも『風の谷のナウシカ』の歌が大好きで、よく歌つてゐるさうだ。
彼女の心が、いつまでも風のやうに自由で在りますやうに。