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帆を張るやうに胸を張れ

同性愛者のサラリーマンのblog


イヤホンの隙間を抜けて桜南風

昨夜テレビを見ながらうとうとしてゐたら、体を揺すられたやうな気がして目が覚めた。

地震だと気づいて朋也の部屋の方を見たら、襖がガタンと音を立てて、中から朋也が飛び出して来た。

「地震。」

さう言つたきり言葉の出ない朋也を座らせて、俺はテレビをつけた。
ふと見ると、朋也は手に何か握り締めてゐる。

「それ、何?」

俺がさう言ふと、朋也は手を開いて、それを見せてくれた。

「鯰?」

「はい。」

おばあちやんがと言ひ掛けて、朋也は祖母と言ひ直した。

小さな紙切れに鯰が描かれてゐる。
多賀城をたつ時に朋也のおばあさんが持たせてくれたらしい。

「下手ですけどね。」

朋也はさう言つて手の中の鯰を見つめた。

小さくて黒くて、少し歪な鯰は、おばあさんと朋也の“絆”なのだと思つた。


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