帆を張るやうに胸を張れ

子猫ちやんは福祉関係の専門学校に通つてゐます。介護士さんの卵。
高齢社会に向けて真つしぐらな今の日本では需要の高い職業だし、卒業後も引く手あまたかと思はれるのですが、就労環境や職業理念等、色々な問題が有るのださうです。

大変ぢやない仕事なんて無いけれど、人間対人間の仕事はやつぱり大変なんだよね。

深夜勤の子猫ちやんと就職の話をしてゐて、

「就職出来なかつたら此処に就職しちやへばいいんぢやね？」

「ですねー♪○○さん(店長の息子)、宜しくお願いしまーす。」

とか言つてたの。
さうしたら店長の息子は、商品棚見たまんま振り返りもせず、

「ぢやあ専門なんか止めちまつて、うちの試験受けれあいいぢやん。」

つて。

「理念だか何だか知らねえけど、そんな考へなら何の仕事でもいいんぢやねえの？仕事、何だと思つてんだよ。給料？」

子猫ちやんは数秒固まつた後、すみませんと頭を下げました。

店長の息子つて、今のコンビニがまだ酒屋だつた時から、よく店の手伝ひをしてたんだ。レジでカップ酒を開けて飲み始めちまふやうな酔つ払ひにも丁寧に接客してゐて偉いなあと思つたものです。
父親である店長の背中をみながら、仕事とは何かを自然に学んだのだらうね。

かう云ふ格好良い大人との出逢ひを財産にして、いつか子猫ちやんも立派な大人になる事でせう。