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帆を張るやうに胸を張れ

同性愛者のサラリーマンのblog


幾何学の影細しけり春の昼

古いネジや、錆びてしまつたやうなネジは、本当に始末が悪い。

ある機械の部品を留めてゐるネジが錆びて、どうしやうもない状態になつてしまつた。
俺は離れた所にゐたから初めは気付かなかつたんだけど、だんだん騒がしくなつてきたのでちよつと行つてみた。

「どうしたの?」

俺が声を掛けるとそこに居合はせた同僚が、苦笑ひで首を捻りながら、俺にドライバーを渡してきた。

俺は機械の前に膝をついてドライバーを差し入れてみた。
ネジ山にドライバーを強く宛がつて、先づは締める方向へ…

「課長、反対ですよ。」

呆れた口調で俺を止める声がする。

「うん。」

俺は顔を上げずにネジを戻し、ドライバーの尻でネジ山を叩いた。
先程の声が俺の頭の上でぶつぶつ呟いてゐる。

私がやつと回したのに戻しちやつて…
叩いたつてネジは取れないから…

やがてネジはクルクル回つて俺の手のひらに落ちた。

怪力自慢の女の子つつふのはなんだ、あれも一種の中二病なの?

君が力持ちなのはよく判つたけどさ、ネジは少しずつ逆に戻しながら回したり、ネジ山の天辺を叩いたりすると早く弛む事が有るんだ。
今度からその馬鹿力でネジ山を潰す前に俺を呼んでくれたまへ。


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