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帆を張るやうに胸を張れ

同性愛者のサラリーマンのblog


ハロウィーン小鬼黒猫魔女南瓜

彼とは既に二度程寝てゐた。
その日も待ち合はせをして酒を飲むのもそこそこに、俺のアパートの部屋に彼を連れ込んだのだつた。

処がこんな時に限つて、真夜中を少し回つた頃に、俺の大学時代の友達が酔つ払つて訪ねてきたりするのだ。

友達は屈託の無い笑顔で彼に詫びると、水をがぶ飲みして台所の床に寝転がり、直に寝てしまつた。

聞こえ出した鼾を背中に、俺達は布団を敷いてある隣の部屋の襖を静かに閉めた。


「ねえ。」

腕の中を覗き込むと、闇の中で切れ長の瞳がきらきらと輝いてゐる。

「していいよ。俺、絶対声出さないからさ。」

掠れる囁きに体の内側が汗ばむ。気がついた時には、目の前に差し出された首筋に、鎖骨に歯を立ててゐた。

彼の身体が軋む程抱き締めた後、乱暴に引つくり返して覆ひ被さる。さうして置いて俺は布団から手を伸ばして、本棚の下段の雑誌の後ろからローションとコンドームを引つ張り出した。

「そんな所に隠してあるんだ。」

「シッ…」

再び彼を抱き込むと、太股を膝で割つて彼のペニスに指を這はせる。
足を絡ませるやうにして更に大きく足を開かせると、彼は枕代はりにしてゐたクッションに顔を埋めた。

台所からは相変はらず友達の大きな鼾が聞こえる。俺は彼のくぐもつた苦し気な声を聞きながら行為に没頭した。

時々彼はクッションから顔を上げて、息継ぎをするやうに息を吸ひ込んだ。
その仕草がいぢらしくて、俺はいつさう荒々しく彼を抱いた。

慌ただしい行為の割りに快感は強く、二人はほぼ同時に果てると、後片付けもそこそこに絡み合つたまま眠りに落ちた。

どのくらいゐさうしてゐたのか、俺は尿意を覚えて目を覚ました。台所を覗くと、友達は昨夜の姿勢のままぐつすりと寝込んでゐた。
その顔を暫し眺めてから、俺は煙草を咥えてトイレに入つた。

小便をしながら、俺は寝起きのぼんやりする頭で考へてみた。

もしも昨夜、セックスの最中に襖を開けられてゐたら、どうなつたのだらう。

現実感の無いその問ひは、煙草の煙と共に、換気扇に吸ひ込まれていつた


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