性教育。
午前5時。帰宅するなり慌ただしくシャワーを浴びる俺を、朋也は神妙な面持ちで見つめてゐた。
「あのー、朝帰りつてやつですよね。」
「ごめんな。夕飯何食つた?」
「あ、大丈夫です。適当に食べたから。」
朋也の視線の先を見ると、台所にコンビニの袋が有る。
「ごめんな。ホント。」
昨夜は会社を出る時に遅くなるからとメールをしたきり、そのまま朝帰りになつてしまつたのだ。
朋也が起き出す前にと早朝に帰宅したのだが、何故だか今朝は随分と早起きだ。
とりあえず珈琲を入れる為に台所へ入るのだが、背中に朋也の視線を感じて振り返れない。
「あの…」
湯が沸くまで一服しようと煙草を咥へるが、火を点けるのが何故か躊躇はれた。
悪い事はしてゐないと思ふけれど、やつぱり後ろめたい。
「何?」
「父さんの知つてる人ですか?」
振り返ると朋也は笑つてゐる。
俺は少しだけ気が緩んで煙草に火を点けた。
「いや、知らん筈だけど。」
「内緒?」
「言ひたきや言へよ。」
俺はニヤニヤする朋也の頭を小突く真似をしてから、二人分のマグカップを持つて居間へ入つた。
居心地の悪さを感じながらも俺は朋也の反応にホッとしてゐた。
さうだよな。コイツだつてもう、子供ぢやないんだから。
俺はまるで、幼い子供に一人きりで留守番をさせ、夜遊びをした親のやうな気分になつてゐた自分に気づいて、急に可笑しくなつた。
まあ、性教育つて事で。
テレビの画面を見つめたまま珈琲を啜る俺の横顔を、朋也はじつと見てゐる。
俺のこの“朝帰り”が朋也の両親に伝はるのは時間の問題だらう。
「結婚とか…」
「ああ、さう云ふんぢやあないんだ。」
ごめんな、翼。
「あのー、朝帰りつてやつですよね。」
「ごめんな。夕飯何食つた?」
「あ、大丈夫です。適当に食べたから。」
朋也の視線の先を見ると、台所にコンビニの袋が有る。
「ごめんな。ホント。」
昨夜は会社を出る時に遅くなるからとメールをしたきり、そのまま朝帰りになつてしまつたのだ。
朋也が起き出す前にと早朝に帰宅したのだが、何故だか今朝は随分と早起きだ。
とりあえず珈琲を入れる為に台所へ入るのだが、背中に朋也の視線を感じて振り返れない。
「あの…」
湯が沸くまで一服しようと煙草を咥へるが、火を点けるのが何故か躊躇はれた。
悪い事はしてゐないと思ふけれど、やつぱり後ろめたい。
「何?」
「父さんの知つてる人ですか?」
振り返ると朋也は笑つてゐる。
俺は少しだけ気が緩んで煙草に火を点けた。
「いや、知らん筈だけど。」
「内緒?」
「言ひたきや言へよ。」
俺はニヤニヤする朋也の頭を小突く真似をしてから、二人分のマグカップを持つて居間へ入つた。
居心地の悪さを感じながらも俺は朋也の反応にホッとしてゐた。
さうだよな。コイツだつてもう、子供ぢやないんだから。
俺はまるで、幼い子供に一人きりで留守番をさせ、夜遊びをした親のやうな気分になつてゐた自分に気づいて、急に可笑しくなつた。
まあ、性教育つて事で。
テレビの画面を見つめたまま珈琲を啜る俺の横顔を、朋也はじつと見てゐる。
俺のこの“朝帰り”が朋也の両親に伝はるのは時間の問題だらう。
「結婚とか…」
「ああ、さう云ふんぢやあないんだ。」
ごめんな、翼。