帆を張るやうに胸を張れ

従兄が車を出してくれると言ふから待つてゐたら、なんとベンツのワゴン車で現れました。しかも左ハンドル。

おのれはヤクザか。

デカいから目立つわ、寺の駐車場に入れ難いわで大変でした。

この父方の従兄とは、子供の頃からよく似てゐると言はれてゐたんだけど、歳を取つたらますます似てきたらしいです。
をぢやをばが言ふには、後ろ姿、特にうなじの辺りが似てゐるのださうな。

子供の頃は墓参りの度に、墓の間を走るな、虫を取るなつて、よく怒られたつけなあ。墓にゐる虫は死んだ人の魂が入つてゐるんだと大人達に脅かされて、こつそり従兄弟達と、近所の雑木林に放しに行つたりした。

西瓜の種をそこら中に飛ばして怒られたり、池に花火を投げ込んで怒られたり、仏壇の扉にデカいカタツムリを這はせて怒られたり。

あれから俺は大人になり、もう怒られる事も無くなつて、怒るべき子供も持たずに今年も夏が過ぎてゆきます。